ずいぶん久しぶりのエントリになってしまった。
記事を書いてアップする余裕がなかったが、ずっとAXGPの動向を追ってきた。その過程でいろいろな言説を見聞きし、誤解だよなあと感じることがままあるので、改めて説明を加えてみたい。
2012/10/9、ソフトバンクの新商品発表会があり、AXGP対応スマートフォンが発表された。が、ソフトバンクのスマートフォンは買うつもりもないので機種の話題はさらっとスルー。
発表会のオンデマンド配信動画で注目発言があった。
新商品発表会「2012 Winter - 2013 Spring」 | ソフトバンクモバイル株式会社
http://webcast.softbankmobile.co.jp/ja/conference/20121009/index.html
この中で孫社長がAXGPについて言及している。(動画の14:15~あたりから)
「TD-LTE完全互換、我々のほうが上位レイヤの技術基準を持っておりますが~~~」
WILLCOMが手がけていたXGPをTD-LTEにすり替えた詐欺的手法だという風評が大変多いが、それが誤解だということを孫社長の発言で裏付けることができる。上記の通り、AXGPはTD-LTEと完全な互換性を確保した上位技術であり、TD-LTE+αであり、αの部分にXGPから続く思想や技術を受け継いでいるのである。
と言っても、孫社長の言うことなんか信用できるか!と思う人も(自分も含め(笑))大勢いることと思う。
しかし以下の情報と照らし合わせてみると、単なる社長の大風呂敷発言ではないことが分かる。
過去エントリでも紹介したが、WCP近CTOのインタビュー記事である。
近義起CTOに聞くAXGP戦略「都市部での大容量モバイル実現がAXGPの責務」 | ビジネスネットワーク.jp
http://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/2156/Default.aspx
近CTOはWILLCOMのXGP開発時代から開発の陣頭指揮をとっていた方で、もはや彼自身がXGPと考えてもさして荒唐無稽ではない存在の人物だが、その近CTOがインタビューでこう語っているのだ。
「XGPで設計したデザインコンセプトやアルゴリズムなどを保ちながら、グローバルなエコシステムに合わせていこうということで、TD-LTEとの互換を強めるように規格を改造していった。これがAXGPなのです。」
(他にも注目発言があったが元記事が会員限定になっちゃってるので、過去エントリ:http://icktty.blogspot.jp/2012/05/wcpcto-axgp.html をご覧ください)
XGP人間であるところの近CTOが言ってるのだから、WILLCOM時代からXGPに期待してきた身としては、この先も信じて期待し続けるしかないでしょうと。何を疑いを差し挟む余地があるのですかと個人的には思っている。
さて、そのTD-LTEにも誤解されている点があるなあと感じている。
TD-LTEの紹介には必ずと言っていいほど「中国の規格」というように書いてあり、いわゆるLTEとは違うもの、下手したらまがい物なのではないかという印象を与えている。
だが、LTEとTD-LTEは、3GPP Release 8ないしRelease 9で定義されているLTE規格の中で、FDDモードとして定義されているのがいわゆるLTE、TDDモードとして定義されているのがTD-LTEというだけの、同じ規格のモードが違うだけのものである。
誤解を招きやすい経緯があることはある。
3G通信規格では、中国は国策としてTD-SCDMAという規格を独自に開発した。
この規格は、世界でも、中国国内においてもいまひとつ芳しくないが、これを4G化したのがTD-LTEととらえてしまえば、そう誤解してしまうのも仕方がない。
が、TD-LTEは、はじめから国際的な協調のもと、3GPPでFDDもTDDもとりまとめて規格化された、というのが実際の経緯である。
上記の通りの国策開発の結果として、中国にTDD技術の蓄積やノウハウがあって、TD-LTEの成立に対する中国の寄与が大きかったということは当然あるだろうが、中国の規格というのは言い過ぎでしかない。
それは、世界中のWiMAX事業者が、WiMAXには先がないということでTD-LTEを移行先に選んでいることからも言える。例えば、先ごろソフトバンクによる買収が報じられた米スプリント・ネクステル社の傘下、米クリアワイヤ社もそうである。最近では、auというかKDDI資本のUQですら、TD-LTEへの移行を示唆するほどの状況である。本当に中国独自規格で、世界標準規格のLTEとは違うものだったなら、まずそのような流れになるわけはない。
LTEとTD-LTEは、基地局装置も通信チップも両対応であることが主流となっていることからも、TD-LTEは名実ともに世界標準規格であると考えて差し支えない。
そう考えると、XGPがTD-LTEを取り込んでAXGPとなったことについても、むしろ喜ばしいことと捉えることが可能である。
いやそうじゃねえよ、認めねえよと考えている人は、さらに以下のような点を誤解していないだろうか。
XGPとの顕著な差異として、通信速度の上下比率がある。
XGPは上下対称、上下20Mbpsまで実現ずみで、将来的には上下100Mbpsとされてきた。
AXGP上り細すぎダメダメじゃねえか。
それはその通りなのだが現実問題としてどうだろうか。
現状、高速な上りが活きるようなアプリケーションやシステムはさほど多くない。言い替えると上り速度のニーズはさほど高くない。加えて、デバイスの能力的に、ワイヤレス通信の主役であるスマートフォンやモバイルWiFiルータに飛び抜けて高速な上り速度を実装するのは困難だ。
昔からだが、ウィルコムは時代を先取りしすぎた感がある。
とは言え、TD-LTEは上下比率を柔軟に変更できる規格であり、原理的には動的に上下比率を変えながら通信することもできるものである。さすがにそこまでは干渉やらなんやらで技術的なブレイクスルーがないと無理だろうが、モバイルデバイスで100Mbps級の上り速度を実現するのとどっちもどっちのような気もする。それはさておき周波数割り当てなどのタイミングで全体的に見直すことは現実的に可能だろう。要するに、ニーズが高まりデバイス能力が追いついたらそうすることができる余地があるのだ。
また、PHS・XGPの象徴とも言える自律分散機能がなくなっているのでは?という点。
これについて、現状のAXGPで実現できているのかいないのかといった情報がない。
しかし、以下を見て欲しい。
2012 日中TDDフォーラム
http://www.xgpforum.com/new_XGP/ja/topics/2012_TDD_Forum/2012_TDD_Forum.html
(近氏のプレゼン資料)http://www.xgpforum.com/new_XGP/ja/topics/2012_TDD_Forum/doc/01_WCP.pdf
上記資料の85ページに「Autonomous」という語句が出てくる。「自律」。
自律分散について、AXGPの、現時点ではなく今後でも、何かしらの考えがあることの表明だろう。
ミスターXGP近氏が言ってるのだから(しつこい)。
というわけで、AXGP、TD-LTEの前途は明るい、というのが個人的な展望である。
ちょっとだけ正直に吐露すると、ウィルコムが事実上倒産しソフトバンク資本下に入ったとき、少なからず失望を覚えた。
しかし、だからといって、時計の針を戻すことは出来ないのだから、現状を嘆き続けるより、前向きに捉えて進んでいきたいという思いがある。
そういう思いでAXGPの動向を追い、いいところを見つけて、率直に応援したい気持ちになっている。
だから、私と同じ昔ながらのウィルコムファンの人には特に、一緒にAXGPを応援しましょうよ!と言いたい。いろいろなわだかまりはこの際捨てて前向いて行きましょうよ!ね!
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